日商簿記1級と公認会計士の難易度はどう違う?4回受験者が公認会計士目線も交えて整理

「日商簿記1級と公認会計士、どっちを目指せばいいの?」「簿記1級の延長で会計士まで行けるの?」と検索した方へ。

私は日商簿記1級を4回受験で合格しました。公認会計士は受験していませんが、会計士受験生の友人や合格者の話を聞いてきた立場から、両試験の難易度の違いを実体験ベースで整理します。

この記事では、両試験の概要、偏差値・勉強時間・合格率の比較、出題範囲の重なりと違い、「簿記1級合格は会計士合格まであと何%か」、そして「会計士まで目指すべき人 vs 簿記1級で止めるべき人」の判断軸を、簿記1級ホルダーのリアル視点で書きます。

目次

日商簿記1級と公認会計士の概要

両試験の基本的な位置づけから整理します。

日商簿記1級:民間資格、計算特化、合格率10%

日商簿記1級は、日本商工会議所が実施する民間資格です。商工会議所主催の検定試験なので、国家資格ではありません。独占業務もありません。

試験範囲は商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目。70点以上で合格、ただし1科目でも40%未満があると足切りで不合格になります。

合格率はここ数年8〜13%の間で推移していて、平均10%前後。年2回の試験で、私のような社会人受験生から大学生まで幅広く受験しています。

「会計の本格的な知識を持っている」と認められる資格として、就職・転職・キャリアアップで重宝されます。

公認会計士:国家資格、医師・弁護士と並ぶ三大難関

公認会計士は、医師・弁護士と並ぶ「三大難関国家資格」の1つです。試験合格後、実務経験+補習所修了+修了考査合格まで全部こなして、ようやく公認会計士になれます。

独占業務として「監査証明業務」があります。上場企業の財務諸表に「これは正しい数字です」と証明できるのは、世界中で公認会計士だけです。

試験は短答式(マークシート)と論文式(記述)の2段階。短答式合格率約20%、論文式合格率約40%。全体の合格率は約8%です。

科目は短答式が4科目(財務会計論・管理会計論・監査論・企業法)、論文式が5科目(財務会計論・管理会計論・監査論・企業法・租税法+選択科目)。

試験の根本的な性格が違う

両試験の最大の違いは「試験の性格」です。

簿記1級は「計算90%+理論10%」で、出題形式はほぼ計算問題。電卓を叩いて答えを出す試験です。

公認会計士は「計算50%+理論50%」で、論文式では記述問題が中心。「なぜそうなるのか」を文章で説明できないと点が取れません。

つまり、簿記1級は「計算スキル」、公認会計士は「計算スキル+論述スキル+専門知識」を問う試験です。難易度の差は、ここに起因しています。

偏差値・勉強時間・合格率の数字で比較

数字で両試験の難易度を比較します。

偏差値:簿記1級60〜67、会計士72〜75

ネット上で広く言われている偏差値の目安は以下の通りです。

・日商簿記1級:60〜67

・公認会計士:72〜75

偏差値で見ると、両者の差は「努力で届くレンジ」と「ほぼ天才の領域」の差です。

簿記1級は「中堅大学レベルの努力」で届きますが、会計士は「難関大学+α」のレンジ。私のように偏差値40レベルの社会人が4回受験で簿記1級に届くのと、会計士に届くのとでは、必要な努力量が桁違いです。

勉強時間:簿記1級500〜1,500時間、会計士3,000〜5,000時間

公式に発表されている数字はありませんが、合格者の体感を集計すると以下のレンジに収まります。

・日商簿記1級:500〜1,500時間(私は3,168時間かかった)

・公認会計士:3,000〜5,000時間

会計士は簿記1級の3〜6倍の勉強時間が必要、というのが一般論です。

ただし、簿記1級は私のように低偏差値の社会人初学者が挑むと、1,500時間では足りない場合があります。私が3,168時間かかったのは「初学者+社会人+低偏差値」の三重苦が原因です。

会計士の3,000〜5,000時間は、ほとんどが大学在学中の理系・難関大文系の学生による数字。社会人で挑むと、これも倍以上に伸びる傾向があります。

合格率:簿記1級10%、会計士短答20%・論文40%

合格率を並べると、

・日商簿記1級:約10%

・公認会計士 短答式:約20%

・公認会計士 論文式:約40%(短答合格者中)

・公認会計士 全体:約8%(短答×論文)

数字だけ見ると「簿記1級10% vs 会計士8%」と近いですが、母集団のレベルが全く違います。

会計士の8%は「大学在学中から本気で挑む層」の中で勝ち上がる8%。簿記1級の10%は「会計士受験生+学生+社会人」の混合母集団で受かる10%。

母集団のレベルの差を加味すると、会計士の「同じ8%に入る」難易度は、簿記1級の数倍以上です。

出題範囲の重なりと違い

両試験の出題範囲を見ると、簿記1級は会計士の「下位互換」になっていることが分かります。

商業簿記・会計学:約70%が重なる

商業簿記の論点は、簿記1級と会計士でほぼ重なります。

連結会計、税効果会計、退職給付会計、リース取引、ストック・オプション、収益認識……。簿記1級のテキストに出てくる論点は、会計士の「財務会計論」の範囲にほぼ全部入っています。

ただし、出題の深さが違います。簿記1級は「処理の手順を覚えて計算できる」ことを問いますが、会計士は「なぜその処理になるのか、理論的根拠を説明できる」ことを問います。

「同じ論点でも、聞き方の深さが3〜5倍」というのが、簿記1級合格者が会計士に挑むときに最初に感じる壁です。

工業簿記・原価計算:簿記1級にあり、会計士は管理会計論として深掘り

工業簿記・原価計算は簿記1級では「計算問題が中心」です。標準原価計算、直接原価計算、CVP分析あたりが頻出論点。

会計士では「管理会計論」として、上記の計算論点に加えて「経営分析」「意思決定会計」「予算管理」など、戦略的な視点まで含まれます。

簿記1級レベルの計算スキルがあれば、会計士の管理会計論の計算問題は半分くらい解けます。残り半分は会計士独自の応用論点なので、追加で学習が必要。

会計士独自:監査論・企業法・租税法・選択科目

会計士には、簿記1級には全く出ない4科目があります。

・監査論:会計監査の理論と実務

・企業法:会社法・商法・金融商品取引法

・租税法:法人税・所得税・消費税

・選択科目:経営学・経済学・統計学・民法のいずれか

これらは簿記1級の延長線上にはない、完全に新規分野です。会計士を目指すなら、簿記1級合格後にこの4科目をゼロから学ぶ必要があります。

特に「企業法」「監査論」は法律・実務の文章を大量に読む必要があり、簿記1級で身につく計算スキルが全く活きません。

簿記1級合格者は会計士合格まで何%進んでいるか

「簿記1級に受かったら、会計士はあと何%?」を整理します。

公認会計士受験生の体感:30〜40%程度完了相当

会計士受験生の友人や合格者数人に聞いた感覚値だと、「簿記1級合格者は会計士の進捗で30〜40%程度」というのが共通認識でした。

内訳としては、

・財務会計論(短答式・論文式の計算部分):50〜60%完了

・管理会計論:40〜50%完了

・財務会計論の理論部分:10〜20%完了

・監査論:0%

・企業法:0%

・租税法:0%

・選択科目:0%

科目数で言えば「7科目中2科目の半分」が完了している状態。

「あと60〜70%」と聞くと、簿記1級合格時点から会計士までの距離が見えてきます。簿記1級合格までに3,168時間使った私の感覚で言えば、会計士までさらに3,000時間以上を投下しないと届かない、というイメージです。

簿記1級の「計算スピード」が直接活きる

簿記1級で身につく最大の武器は「電卓を叩いて計算を流すスピード」です。

会計士の短答式・論文式でも計算問題は出題されます。1問あたり数分で電卓を叩き切る訓練は、簿記1級で十分に身につきます。

会計士受験を簿記1級経由で始める人と、ゼロから始める人では、計算スピードで半年以上の差が出ます。「計算は得意になった」段階から始められるのは、簿記1級経由の大きなアドバンテージです。

簿記1級にない「理論記述力」が壁になる

逆に、簿記1級では一切鍛えられないのが「理論を文章で記述する力」です。

会計士の論文式は、会計理論を「自分の言葉で説明する」ことが求められます。「収益認識基準に基づく会計処理を、5要件のステップに沿って論じよ」のような問題です。

簿記1級は計算だけなので、こうした記述問題は1問もありません。会計士に進むと、ここでつまずく簿記1級合格者が大量に出ます。

「計算は得意でも理論記述で詰む」のが、簿記1級ホルダーの会計士受験での典型的な失敗パターンです。

4回受験者が感じた「簿記1級の難易度の正体」

私の4回受験経験から見えた、簿記1級の難易度の本質を共有します。

簿記1級の合格率10%は「上位10%に入る試験」の実態

簿記1級は「70点以上で合格」と書かれていますが、実態は問題の難易度を調整して合格率を10%前後に着地させる相対評価です。

つまり、「上位10%に入らないと受からない」というのが実態に近い。

公認会計士の合格率8%とほぼ同じ数字ですが、簿記1級の母集団には「学生」「社会人初学者」が多く含まれるため、相対的に上位10%に入りやすい構造になっています。

会計士の8%は「会計士を本気で目指す層」の中で勝ち上がる8%。難易度の差は、ここに大きく出ます。

私の3,168時間の内訳と教訓

私の累計3,168時間の内訳は以下の通りです。

・1回目(162回)まで約:1,500時間(テキスト中心、過去問演習浅い)

・2回目(164回)まで:追加で約500時間

・3回目(165回)まで:追加で約600時間

・4回目(167回)まで:追加で約500時間(過去問×テキスト往復を徹底)

最初の1年はネットスクールでフル受講、その後3年は独学で過去問演習中心。「過去問を10年分以上、累計100周以上回した」が4回目の合格要因でした。

簿記1級は「正しい勉強方法」を見つけるまでが大変です。3回不合格を経験して、ようやく自分に合う方法を確立できました。

会計士の3,000〜5,000時間が「桁違い」な理由

私が3,168時間で簿記1級に到達したのと、会計士が3,000〜5,000時間というのは、数字的には似ています。

ただし、会計士の3,000〜5,000時間は「ストレートで合格できる素養のある人」の数字です。私のように低偏差値・社会人初学者だと、5,000〜10,000時間覚悟する必要があります。

会計士の難易度の本質は、「同じ時間を使っても、簿記1級と違って合格に届かない人が多い」という点。範囲の広さ、理論記述の壁、母集団のレベル、これらが組み合わさって「努力したら必ず受かる」とは言えない試験になっています。

簿記1級は「努力すれば誰でも受かる」、会計士は「努力プラス適性が必要」。これが私の体感です。

会計士まで目指すべき人 vs 簿記1級で止めるべき人

両試験の難易度を踏まえて、「どこまで目指すべきか」の判断軸を整理します。

会計士まで目指すべき人の特徴

以下に5個中3個以上当てはまる方は、会計士まで挑戦する価値があります。

・大学在学中で、時間を本格的に投下できる

・偏差値が高めで、過去に難関試験を突破した経験がある

・会計の理論や監査論などの「文章を読む・書く」科目が苦じゃない

・3〜5年スパンの長期戦に耐えられる

・将来的に監査法人・大手企業の経理・コンサルなど、会計士の独占業務を活かせる職に就きたい

会計士は「会計のプロ」として認められる究極の資格。本気でキャリアを賭けるなら、挑む価値はあります。

簿記1級で止めるべき人の特徴

逆に、以下に5個中3個以上当てはまる方は、簿記1級で止めるのが現実的です。

・社会人で、本業と勉強の両立がギリギリ

・低偏差値・低学歴で、難関試験への適性に自信がない

・理論記述より計算問題の方が圧倒的に得意

・「会計の基礎が分かる」レベルで満足できるキャリア設計

・3〜5年スパンの試験勉強に耐えられない

簿記1級単体でも「会計の本格的な知識を持っている人」として認められます。十分に価値のある資格です。

私の場合:簿記1級+全経簿記上級+CMAで止めた理由

私自身、簿記1級合格後に会計士を検討しましたが、最終的には「会計士までは目指さない」と決めました。

理由は3つ:

1. 簿記1級に4回受験で3,168時間使った時点で、会計士の追加3,000〜5,000時間に投下する体力が残っていなかった

2. 会計士の監査業務にそこまで関心がなかった

3. 「会計の基礎を理解している」レベルで業務には十分足りる、と判断した

代わりに、全経簿記上級と証券アナリスト(CMA)1次試験を取って、会計+金融の両軸でキャリアを広げる戦略を選びました。

会計士は素晴らしい資格ですが、誰もが目指すべき資格ではありません。自分のキャリアと照らし合わせて、本当に必要かを冷静に判断してください。

まとめ:難易度の差を理解した上で選ぶ

4年・4回受験・3,168時間で簿記1級に届いた立場から、両試験の難易度の差を最後にまとめます。

・簿記1級は民間資格、会計士は国家資格(三大難関)

・偏差値:簿記1級60〜67、会計士72〜75

・勉強時間:簿記1級500〜1,500時間(私は3,168時間)、会計士3,000〜5,000時間

・合格率:簿記1級10%、会計士全体8%(母集団のレベルが違う)

・簿記1級合格は会計士の進捗で30〜40%程度

・簿記1級の計算スキルは活きる、理論記述力は別途必要

・「努力で届く簿記1級」「努力+適性が必要な会計士」

そして、両試験で「どこまで目指すか」を選ぶときに大事な視点は、

「自分のキャリアに、どこまでの資格が必要か」

会計士は素晴らしい資格ですが、すべての人に必要な資格ではありません。「会計の基礎が分かる」レベルで業務に足りるなら、簿記1級で十分。会計士の独占業務(監査)を活かしたいなら、追加投資する価値があります。

私の場合は、簿記1級+全経簿記上級+CMAで「会計+金融の両軸」を取る戦略を選びました。これは1つの選択肢として参考になれば幸いです。

これから簿記1級・会計士に挑む方が、自分のキャリアと照らし合わせて最適な選択ができることを願っています。一緒に目標を達成しましょう。

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この記事を書いた人

低偏差値高校卒業し、社会に出て『発達障害』と診断される。
人生逆転させるため心機一転、日商簿記検定に挑戦するが、簿記3級に4回落ちて絶望。
諦めず挑戦した結果、簿記の最高峰の『日商簿記1級』と『全経簿記上級』に合格する。

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