簿記1級の足切りは、1科目でも10点未満(25点満点の40%未満)なら、合計点に関係なく不合格になる仕組みです。合格には「合計70点以上」と「4科目すべて10点以上」の両方が必要です。つまり、合計で75点取れていても、どれか1科目が9点なら落ちます。
この記事では、足切りの基準をあらためて整理したうえで、足切りになりやすい科目と、本番で足切りを避ける解き方をまとめました。日商簿記1級を4回受験して合格した私の、科目ごとの点数もお見せします。
簿記1級の足切りとは
日本商工会議所の公式ページでは、1級の合格基準は「70%以上。ただし、1科目ごとの得点は40%以上」とされています。科目は商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4つで、公式に公開されている過去の試験問題を見ると、どの科目も25点満点です。
- 合計:100点満点のうち70点以上
- 各科目:25点満点のうち10点以上(40%以上)
- 試験時間:商業簿記・会計学で90分、工業簿記・原価計算で90分
この「各科目40%以上」の条件が、いわゆる足切りです。
なぜ足切りがあるのか
理由は、1級が4つの分野すべてで最低限の力を持っていることを確かめる試験だからだと私は受け取っています。公式ページにもあるとおり、1級に合格すると税理士試験の受験資格が得られます。外部に報告するための会計(商業簿記・会計学)と、社内で原価を計算して経営の判断に使う会計(工業簿記・原価計算)は、仕事ではどちらも使います。
合計点だけで合否を決めると、得意な2科目で高得点を取り、残りの2科目がほぼ白紙でも受かってしまいます。それでは「1級の会計の力がある」とは言えません。だから、どの科目も一定の点を下回らないことを条件にしている、と考えると納得しやすいと思います。
何点未満で不合格になるか(合計75点でも1科目9点なら不合格)
具体的な数字で見てみます。
- 例1:商業簿記9点・会計学22点・工業簿記22点・原価計算22点=合計75点 → 不合格(商業簿記が10点未満)
- 例2:商業簿記18点・会計学20点・工業簿記16点・原価計算16点=合計70点 → 合格
例1は合計点では例2を上回っていますが、商業簿記の1科目だけで不合格になります。基準は「40%以上」なので、ちょうど10点なら足切りにはかかりません。
例2は、実は私が4回目に合格したときの実際の点数です。どの科目も16〜20点で、飛び抜けて高い科目はありません。それでも、4科目とも10点を割らなかったことで合格できました。
足切りになりやすい科目と理由
どの科目が危ないかは、回ごとの難しさで変わります。そのうえで、私が受験したなかで失点が大きくなりやすいと感じたのは次の2つの場面です。
商業簿記:難しい回に当たると手が止まる
商業簿記は範囲が広く、新しく範囲に入った論点や、連結会計のような重い論点が大きく出ることがあります。私が初めて受けた第162回は、範囲に加わったばかりの「収益認識」がガッツリ出て、しかも商業簿記がかなりの難問でした。1つの大問でつまずくと、その科目の点がまとめて伸びなくなります。
工業簿記・原価計算:1つの間違いが芋づる式に響く
工業簿記と原価計算は、前の答えを使って次の数字を出す問題が多い科目です。途中の数字を1つ間違えると、その後ろの答えも全部ずれます。第167回では、原価計算の「予算実績差異分析」で生産・販売量が出せず、後の数値を芋づる式に間違えました。全経簿記上級でも、工業簿記で「仕損品評価額」の資料を読み飛ばし、後ろの問題まで落としています。
足切りは、苦手な科目より、こうした「連鎖して一気に落とす」場面で起きやすいと私は感じています。
足切りを避ける解き方
時間配分:どの科目にも時間を残す
簿記1級は、2科目を90分の中で解きます。片方の科目に時間を使いすぎると、もう片方が10点に届かなくなります。解き始める前に両方の問題にざっと目を通し、それぞれにどれくらい時間をかけるかを先に決めておくと、片方に偏るのを防げます。具体的な配分の目安は簿記1級の時間配分・解く順番にまとめています。
捨て問の見極め:1問にこだわらない
足切りを避けるのに、満点はいりません。必要なのは各科目10点です。見たことのない論点や、資料が多すぎて手が止まる問題は、いったん飛ばして、ほかの科目の取れる問題を先に拾います。難しい1問で粘るより、別の科目の基本的な問題を落とさないほうが、合格には効きます。
解く順番:取れる問題から、途中の数字を残しながら
- 最初に全体を見て、解きやすい問題から手をつける
- 工業簿記・原価計算は、途中の数字を答案用紙の余白に残しながら進める(間違いを見つけて直しやすくなる)
- 資料の読み飛ばしを防ぐため、使った資料に印をつける
この順番は、本番で急にできるものではありません。私は4回目の前に、本試験と同じ時間帯に、必ず時間を計って問題を解くようにしました。過去問の回し方は簿記1級の過去問の使い方・回し方、時間内に解けずに落ち込んでいる人は簿記1級の過去問が解けないときの原因と対処法も参考にしてください。
私の体験:頭が真っ白になっても、10点を割らなければ受かった
4回目の第167回は、本番で工業簿記の資料の多さに、また頭が真っ白になりました。原価計算でも芋づる式に間違え、「また不合格か」と思って受験票を捨ててしまったほどです。
ところが結果は、商業簿記18点、会計学20点、工業簿記16点、原価計算16点の合計70点で合格でした。崩れたと思った工業簿記と原価計算も、10点は下回っていなかったのです。得意だった「組織再編」で巻き返せたことも大きかったと思います。
全経簿記上級でも、似たことがありました。全経上級は各科目100点満点で、各科目40点以上かつ合計280点以上が合格です。私は工業簿記で失敗して47点でしたが、原価計算で得意論点の「最適セールス・ミックス」が出て97点を取り、合計287点で合格しました。工業簿記があと8点低ければ、原価計算でどれだけ取っても不合格でした。
2つの試験を通して感じたのは、崩れた科目があっても、そこで最低ラインを守れれば、ほかの科目で取り返せるということです。逆に、最低ラインを割ってしまうと、得意科目の頑張りは合否に生きません。
まとめ
- 簿記1級は、合計70点以上かつ4科目すべて10点以上(各25点の40%以上)で合格
- 合計75点でも、1科目が9点なら不合格。ちょうど10点なら足切りにはかからない
- 足切りがあるのは、1級が4つの分野すべてで最低限の力を求める試験だから
- 失点が大きくなりやすいのは、難しい回の商業簿記と、芋づる式に間違える工業簿記・原価計算
- 時間をどの科目にも残し、1問にこだわらず、取れる問題から途中の数字を残して解く
満点を目指す必要はありません。4科目とも10点を割らずに、合計で70点に届かせる。その解き方を、過去問で時間を計って練習しておきましょう。
簿記1級の合格伴走では、解いた過去問を見ながら、どの科目で点が崩れやすいか、どこで時間を使いすぎているかを確かめ、次に練習する問題と本番の解く順番を一緒に決めています。
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出典
- 日本商工会議所・各地商工会議所「簿記 試験科目・注意事項(1級)」(合格基準・試験時間):https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class1/exam
- 日本商工会議所・各地商工会議所「簿記 1級」(税理士試験の受験資格):https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class1
- 日本商工会議所・各地商工会議所「簿記 1級過去問題」(各科目の配点25点):https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class1/1qkako
- 全国経理教育協会「受験要項・実施要項・試験規則・出題範囲」(全経簿記上級の合格基準):https://zenkei.or.jp/youkou


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