減損会計とは?固定資産の減損損失をわかりやすく簿記1級保有者が解説

減損会計とは?固定資産の減損損失をわかりやすく簿記1級保有者が解説のアイキャッチ

「決算で出てくる“減損”って何?」「のれん以外の減損もあるの?」——そんな方へ。

減損会計とは、固定資産の価値が大きく下がり、投資額を回収できなくなったときに、帳簿価額を切り下げて損失を計上する手続き のこと。簿記1級保有者の私が、減損の意味・手順(兆候・認識・測定)・計算例を、わかりやすく解説します。業績悪化のニュースでよく聞く「減損損失」の正体がわかります。

この記事の結論
  • 減損=固定資産の価値が下がったとき、帳簿価額を回収可能価額まで切り下げる
  • 対象は建物・機械・のれんなどの固定資産
  • 判断は 兆候→認識→測定 の3ステップ
  • 日本基準では、一度計上した減損は元に戻さない(戻入なし)
減損の構造図。帳簿価額1,000は、回収可能価額600(残る=新しい帳簿価額)と減損損失400(損失に計上)に分かれる。減損損失=帳簿価額−回収可能価額。日本基準では一度下げた帳簿価額は元に戻さない
目次

減損会計とは?(価値が下がった資産を切り下げる)

減損会計とは、建物・機械・設備などの固定資産について、収益を生む力が大きく落ちて「買ったときの金額(投資額)を回収できそうにない」となったとき、その資産の帳簿価額を切り下げて、差額を損失にする会計処理です。

ポイントは、帳簿に載っている資産の金額が、実態より高すぎる状態を正す こと。価値が下がったのに高い金額のままにしておくと、決算書が実態より良く見えてしまうので、それを修正するのが減損です。

ぶんぶん

高く買った機械が、思ったほど稼げなくなった——そんなとき『この機械、もうこの金額の価値はないよね』と帳簿を下げるのが減損。業績悪化のサインとして注目される処理だよ。

なぜ減損するのか(資産の過大計上を防ぐ)

減損の目的は、資産を実態より高く見せないことです。固定資産は、将来お金を生むという前提で帳簿に計上されています。でも、その前提が崩れたら、帳簿の金額は“絵に描いた餅”になってしまいます。

そこで、回収できる見込みの金額まで切り下げ、損失として早めに認識します。これにより、決算書が会社の本当の状態を表すようになります。

減損の対象になる資産

減損の対象は、主に次のような固定資産です。

  • 建物・機械・設備・車両などの有形固定資産
  • のれん(買収で計上した無形資産)
  • ソフトウェアなどの無形固定資産

のれんの減損は、大型買収のあとに業績が悪化したときに起きやすく、ニュースでもよく取り上げられます。のれんそのものについては、別記事で詳しく解説しています。

減損の手順(兆候・認識・測定)

減損は、いきなり損失にするのではなく、3つのステップで慎重に判断します。

手順内容
① 減損の兆候業績の悪化、資産の市場価格の下落などのサインがあるか確認する
② 減損損失の認識割引前の将来キャッシュフローが帳簿価額を下回るなら、減損を「認識する」と判定
③ 減損損失の測定帳簿価額を回収可能価額まで切り下げ、差額を減損損失とする
減損は「兆候→認識→測定」の3ステップで判断する

大事なのは、②の認識の判定。割引前の将来キャッシュフロー(その資産が将来生むお金の合計)が帳簿価額を下回って初めて、減損を計上します。少し価値が下がっただけでは、すぐには減損しません。

【具体例】減損損失の計算

簡単な数字で、減損損失を計算してみましょう。

STEP

帳簿価額を確認する

ある機械の帳簿価額が1,000万円だったとします。

STEP

回収可能価額を見積もる

その機械を使い続けて得られる価値や、売却した場合の金額から、回収可能価額を600万円と見積もります。

STEP

差額を減損損失にする

帳簿価額1,000万円 − 回収可能価額600万円 = 減損損失400万円。仕訳は(借)減損損失400万円 /(貸)機械400万円。帳簿価額を600万円に下げます。

この400万円が、損益計算書に「減損損失」として一度に計上されます。

減損の特徴(戻入なし・業績悪化のサイン)

減損には、知っておきたい特徴があります。

  • 日本基準では、一度計上した減損損失は 元に戻さない(戻入なし)。あとで価値が回復しても、帳簿は戻らない
  • 減損損失は一度に大きく出るため、その期の利益を大きく押し下げる
  • 大型買収後の「のれんの減損」は、巨額の赤字につながることもある

だから決算書を見るときは、減損損失が出ていないか、また多額ののれんを抱えていないかをチェックすると、その会社のリスクが見えてきます。

※この記事は会計の基礎的な解説です。実際の投資判断は、減損だけでなく事業全体を総合的に見て、ご自身の責任で行ってください。

よくある質問(FAQ)

減損会計とは一言でいうと何ですか?

固定資産の価値が大きく下がり、投資額を回収できなくなったとき、帳簿価額を回収可能価額まで切り下げて、その差額を損失として計上する会計処理です。資産を実態より高く見せないために行います。

減損はどんなときに計上しますか?

減損の兆候があり、割引前の将来キャッシュフローが帳簿価額を下回ると判定されたときに計上します。少し価値が下がっただけでは計上せず、兆候・認識・測定の3ステップで慎重に判断します。

減価償却と減損はどう違いますか?

減価償却は、使う年数に分けて毎期規則的に費用化する手続きです。一方、減損は、価値が大きく下がったときに臨時で帳簿価額を切り下げる処理で、計画的ではなく業績悪化などをきっかけに行われます。

一度減損したら、あとで戻せますか?

日本基準では戻せません(戻入の禁止)。一度減損損失を計上したら、その後に価値が回復しても帳簿価額は元に戻しません。なお国際会計基準(IFRS)では、のれん以外は戻入が認められています。

のれんの減損とは何ですか?

買収で計上したのれんの価値が下がったときに行う減損です。大型買収のあとに買収先の業績が悪化すると、巨額ののれん減損が発生し、赤字の原因になることがあります。

まとめ:減損は「価値が下がった資産の切り下げ」

最後に、この記事のポイントをまとめます。

  • 減損=固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで切り下げる
  • 目的は資産を実態より高く見せないこと
  • 判断は兆候→認識→測定の3ステップ
  • 日本基準では戻入なし(一度下げたら戻さない)
  • 減損損失は一度に大きく出て、業績悪化のサインになる

減損は、決算ニュースで「特別損失」として登場する代表格です。意味と手順がわかると、企業の業績悪化のニュースが、ぐっと読み解きやすくなります。

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この記事を書いた人

偏差値40の高卒。社会に出てから発達障害と診断され、人生を変えようと簿記に挑戦するも、3級で4回不合格と挫折続き。それでも諦めずコツコツ続けた結果、簿記の最高峰・日商簿記1級(4回目で合格)と全経簿記上級に合格。2026年6月には証券アナリスト(CMA)第1次試験にも一発合格しました。

「低偏差値でも、コツコツ続ければ受かる」を信条に、簿記1級・証券アナリスト・財務分析の勉強法と合格体験を、このブログとKindle書籍で発信しています。

資格:日商簿記1級/全経簿記上級/証券アナリスト(CMA)第1次レベル試験 合格(2026年6月)

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