自社株買いとは?配当との違い・株主還元のメリットを簿記1級保有者が解説

自社株買いとは?のアイキャッチ

「自社株買いって、会社が自分の株を買って何の意味があるの?」「配当とどっちが株主にうれしいの?」——そんな方へ。

簿記1級と証券アナリスト(1次)で財務分析を学んだ私が、自社株買いを、できるだけやさしく解説します。自社株買いは配当と並ぶ 株主還元 の代表的な方法。仕組みが分かると、ニュースで「自社株買いを発表」と聞いたときの意味がつかめるようになります。

この記事の結論
  • 自社株買い=会社が自社の株を買い戻すこと。配当と並ぶ株主還元
  • 株数が減るので、1株当たり利益(EPS)が上がりやすい
  • 配当と違い 売らなければ課税されず、機動的に実施しやすい のが特徴
自社株買いでEPSが上がる図。当期純利益100は同じでも、発行済株式数が100株から90株(10株消却)に減ると、EPSは1.0円から約1.11円に上がる
目次

自社株買いとは?

自社株買いは、会社が市場に出回っている自社の株式を、自分のお金で買い戻すことです。買い戻した株は「金庫株」として保有するか、消却(消してなくす)します。

配当が「現金を株主に配る」還元なのに対し、自社株買いは「株を買い戻して1株の価値を高める」還元です。どちらも、稼いだ利益を株主に還元する方法という点では同じ仲間です。

ぶんぶん

配当は“現金を配る”、自社株買いは“株数を減らして1株を厚くする”。同じ株主還元でも、やり方が違うんだ。

なぜ自社株買いをするのか

会社が自社株買いをする理由は、主に次のようなものです。

  • 余ったお金を株主に還元したい(有効活用)
  • 1株当たりの価値(EPS)を高めたい
  • 株価が割安だと考えている(自信のサイン)
  • ストックオプションなどに使う株を用意したい

とくに「自社の株は割安だ」という経営陣の判断が背景にあることも多く、自社株買いは“会社からの自信のサイン”と受け取られることがあります。

自社株買いで何が起きる?(EPSが上がる)

自社株買いの最大のポイントは、発行済みの株数が減ることです。利益は同じでも、株数が減れば1株当たり利益(EPS)が上がります。

式で見ると、EPS = 当期純利益 ÷ 発行済株式数。分母の株数が減るので、利益が変わらなくてもEPSは上がる のです。EPSが上がると、1株当たり純資産(BPS)やROEも改善しやすくなります。

EPSやPERといった株価指標とのつながりは、別の記事で詳しく解説しています。

配当との違い

同じ株主還元でも、配当と自社株買いには違いがあります。表で整理します。

観点配当自社株買い
還元の形現金を直接受け取る株価・1株価値が上がりやすい
税金受け取った時に課税(約20%)売らなければ課税されない(繰り延べ)
継続性一度上げると下げにくい一時的・機動的に実施しやすい
1株当たり利益(EPS)変わらない株数が減って上がる
配当と自社株買いの違い(どちらも株主還元だが、効き方が違う)

大きな違いは 税金継続性 です。配当は受け取った時点で約20%が課税されますが、自社株買いは株価上昇という形なので、売らなければ課税されません(課税の繰り延べ)。また配当は一度増やすと減らしにくい一方、自社株買いは「今年は多めに」と機動的に実施しやすいのも特徴です。

自社株買いのメリットとデメリット

いいことばかりではありません。両面を押さえましょう。

メリット

  • EPS・BPS・ROEが改善しやすい
  • 売らない株主は課税されない(税の繰り延べ)
  • 機動的に実施でき、余剰資金を有効に使える
  • 株価の下支えや、割安シグナルになることがある

デメリット・注意点

  • 一時的な施策で、継続性は配当より低い
  • 自己資本が減り、財務の安全度は下がる方向に働く
  • 高い株価で買えば“高値づかみ”になり、かえって損なことも
  • 成長投資に回すべきお金を還元に使っている可能性もある
受験生

EPSが上がるなら、自社株買いはいつでも良いことなんですか?

ぶんぶん

そうとは限らないよ。本業の利益が増えていないのにEPSだけ上がっている場合もある。中身を見るのが大事だね。

株主還元の全体は「総還元性向」で見る

配当と自社株買いは、どちらか一方ではなく両方を行う会社も多くあります。だから株主還元の全体像は、2つを合わせて見るのが正確です。

総還元性向(%)=(配当金 + 自社株買い)÷ 当期純利益 × 100

配当性向だけだと「還元が少ない」ように見えても、自社株買いを足すとしっかり還元している会社もあります。配当性向とあわせて確認しましょう。

【具体例】自社株買いでEPSが上がる流れ

簡単な数字で、EPSが上がる様子を見てみましょう。

項目自社株買い前自社株買い後
当期純利益100100
発行済株式数100株90株(10株を消却)
1株当たり利益(EPS)1.0円約1.11円
自社株買いでEPSが上がる例(利益は同じでも1株の価値が上がる・数字は説明用)

当期純利益は100で変わりません。でも自社株買いで株数が100株から90株に減ると、EPSは 100 ÷ 90 = 約1.11円 に上がります。利益が増えたわけではないのに、1株の価値が高まったわけです。

ここで大事なのは、「EPSが上がった理由」を見分けること。本業の利益が伸びてEPSが上がったのか、自社株買いで株数が減って上がったのか。中身まで見ると、会社の実力がより正確に分かります。

自社株買いと決算書(簿記の知識が効く)

自社株買いをすると、貸借対照表の純資産が減ります(自己株式というマイナスの項目で表示されます)。配当も純資産(利益剰余金)を減らします。どちらも「会社のお金を株主に返す」動きなので、純資産が小さくなるのは共通です。

こうした動きは決算書に表れます。簿記で純資産の仕組みが分かると、株主還元のニュースが“数字の動き”として理解できるようになります。

よくある質問(FAQ)

自社株買いとは何ですか?簡単に言うと?

会社が市場から自社の株式を買い戻すことです。買い戻した株を消却すると発行済株式数が減り、1株当たりの価値(EPS)が上がります。配当と並ぶ株主還元の方法です。

自社株買いをするとなぜ株価が上がりやすいのですか?

株数が減って1株当たり利益(EPS)が上がること、需要が増えること、経営陣が「割安」と判断したサインと受け取られることなどが理由です。必ず上がるわけではありません。

配当と自社株買いはどちらが株主に有利ですか?

一概には言えません。現金がすぐ欲しいなら配当、課税を繰り延べて値上がりを期待するなら自社株買いが向きます。株主の状況や考え方によって変わります。

自社株買いのデメリットは何ですか?

一時的な施策で継続性が低いこと、自己資本が減って財務の安全度が下がる方向に働くこと、高い株価で買うと損になることなどです。中身を見て判断することが大切です。

総還元性向とは何ですか?

配当と自社株買いを合わせた還元の割合で、「(配当+自社株買い)÷当期純利益×100」で計算します。株主還元の全体像を見るのに役立ちます。

まとめ:自社株買いは「株数を減らす」株主還元

最後に、この記事のポイントをまとめます。

  • 自社株買い=会社が自社株を買い戻す株主還元
  • 株数が減るので、1株当たり利益(EPS)が上がりやすい
  • 配当と違い、売らなければ課税されず、機動的に実施できる
  • 一時的・自己資本が減るなどのデメリットもある
  • 株主還元の全体は、配当とあわせた総還元性向で見る

自社株買いは、配当と並ぶもう一つの株主還元です。仕組みと配当との違いが分かると、企業の還元方針を立体的に読めるようになります。

※この記事は特定の銘柄や投資をすすめるものではありません。投資の判断はご自身の責任で行ってください。指標は、あくまで「自分で会社を数字で見る」ための道具です。

自社株買いとは?のアイキャッチ

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

偏差値40の高卒。社会に出てから発達障害と診断され、人生を変えようと簿記に挑戦するも、3級で4回不合格と挫折続き。それでも諦めずコツコツ続けた結果、簿記の最高峰・日商簿記1級(4回目で合格)と全経簿記上級に合格。2026年6月には証券アナリスト(CMA)第1次試験にも一発合格しました。

「低偏差値でも、コツコツ続ければ受かる」を信条に、簿記1級・証券アナリスト・財務分析の勉強法と合格体験を、このブログとKindle書籍で発信しています。

資格:日商簿記1級/全経簿記上級/証券アナリスト(CMA)第1次レベル試験 合格(2026年6月)

【簿記学習に困ったら個別相談もOK】

簿記1級・2級・3級の質問・学習相談を、ココナラで受付中です。
★5.0/5件の評価で、初回返答1時間以内。
「テキストのこの部分が分からない」「自分の勉強計画は合ってる?」など、お気軽にご相談ください。

▶ ココナラで相談する

【ブログでは書ききれない実体験はKindle本にまとめました】

『日商簿記1級合格体験記』(Kindle)
3回不合格の心境、4回目で合格するまでのリアルな葛藤まで、ブログでは書ききれなかった内容を1冊にしています。

▶ Amazonで読む

【他のSNS・発信はこちら】

X(旧Twitter)、ブログ、他のKindle本、ココナラ全サービスを
lit.linkにまとめてあります。

▶ ぶんぶんの全リンクを見る

目次