ROIC(投下資本利益率)とは?ROEとの違い・計算式を簿記1級保有者が解説

「ROIC(ロイック)って何?」「ROEとどう違うの?」——そんな方へ。

簿記1級と証券アナリスト(1次)で財務分析を学んだ私が、ROIC(投下資本利益率)を、できるだけやさしく解説します。ROICは、借金も含めて事業に投じたお金で、本業がどれだけ効率よく稼いだか を表す指標です。最近は「ROIC経営」という言葉も増えていて、注目度が上がっています。

この記事の結論
  • ROIC=NOPAT(税引後の営業利益)÷ 投下資本(借金+自己資本)
  • ROEと違い、借金を増やしても数字が水増しされない(本業の実力が出る)
  • ROIC > WACC(資本コスト)なら、会社は価値を生んでいる
ROIC(投下資本利益率)の組み立て方の図。分子は営業利益120×(1−税率0.3)でNOPAT84、分母は有利子負債400+自己資本600で投下資本1,000、ROICは84÷1,000で8.4%。ROIC8.4%>WACC5.6%で価値創造
目次

ROIC(投下資本利益率)とは?

ROIC(Return On Invested Capital)は、事業に投じたお金(投下資本)に対して、本業でどれだけ利益を生んだかを表す指標です。「投下資本利益率」と訳します。

ポイントは、借金(有利子負債)も自己資本も、まとめて“事業の元手”として見る こと。株主のお金だけを見るROEと違い、会社全体が本業でどれだけ効率よく稼いだかを、素直に表してくれます。

ぶんぶん

ROEは借金を増やすと見かけ上よくなるけど、ROICは『借金込みの元手』で見るから、ごまかしが効きにくい。本業の地力が分かる指標だよ。

ROICの計算式(NOPAT と 投下資本)

ROICは、次の式で計算します。

ROIC(%)= NOPAT ÷ 投下資本 × 100

式に出てくる2つの言葉を押さえましょう。

NOPAT(ノーパット)=税引後営業利益。「営業利益 ×(1 − 実効税率)」で計算します。本業のもうけ(営業利益)から、もし税金を払ったら…という形で税引き後にした金額です。借金の利息を引く前なので、純粋な本業の成果を表します。

投下資本=事業に投じたお金。「有利子負債 + 自己資本」で計算するのが基本です。お金を借りて集めたぶんも、株主が出したぶんも、ぜんぶ事業の元手として数えます。

ROICとROE・ROAの違い

似た指標にROE・ROAがあります。何が違うのか、表で整理します。

指標計算式見ているお金特徴
ROE当期純利益 ÷ 自己資本株主のお金だけ借金を増やすと数字が上がる
ROA利益 ÷ 総資産資産の合計事業外の資産も含む
ROICNOPAT ÷ 投下資本事業に投じたお金(借金+自己資本)借金の影響を除いた本業の効率
ROIC と ROE・ROA の違い(ROICは“本業の資本効率”を素直に表す)

いちばんの違いは 借金の扱い です。ROEは株主のお金(自己資本)だけで割るので、借金を増やして事業を大きくすると、数字が上がって見えます。一方ROICは、借金も元手に入れて割るので、借金で水増しできません。だから「本業そのものの稼ぐ効率」を知りたいときに向いています。

受験生

じゃあROEが高くても、ROICが低いことがあるんですね。

ぶんぶん

そう。ROEが高いのが『借金をたくさん使っているから』というケースもある。ROICまで見ると、その正体が分かるんだ。

ROICが大事な理由(ROIC > WACC で価値創造)

ROICがとくに注目されるのは、「会社が価値を生んでいるか」を判定できるからです。

会社はお金を集めるのにコストがかかります(借金なら利息、株主には期待リターン)。この調達コストの平均が WACC(加重平均資本コスト) です。

そして、ROIC > WACC なら、集めたお金のコスト以上に本業で稼げている=会社は価値を生んでいる、と判断できます。逆にROICがWACCを下回ると、稼いでも調達コストに負けていることになります。ROICは、この「価値を生んでいるか」を見るものさしなのです。

【具体例】数字でROICを計算してみる

簡単な数字で、計算の流れを追ってみましょう。

項目金額計算
営業利益120
実効税率30%
NOPAT(税引後営業利益)84120 × (1 − 0.3)
有利子負債400
自己資本600
投下資本1,000400 + 600
ROIC8.4%84 ÷ 1,000
ROICの計算例(数字は説明用・単位は省略)

まずNOPATを出します。営業利益120に対し、税率30%ぶんを差し引いて 120 ×(1 − 0.3)= 84。次に投下資本は、有利子負債400と自己資本600を足して 1,000。最後に 84 ÷ 1,000 = ROIC 8.4% です。

もしこの会社のWACC(資本コスト)が5%なら、ROIC 8.4% > WACC 5% なので、調達コスト以上に稼げている=価値を生んでいる、と読めます。

ROICの目安と使うときの注意点

ROICは一般に8%程度が一つの目安とされますが、いちばん大事なのはWACCを上回っているかどうかです。使うときは次の点に注意しましょう。

  • 業種で資本の重さが違う(設備産業は投下資本が大きくROICが低めになりやすい)
  • 単年だけで判断しない(一時的な利益でブレることがある)
  • WACCとセットで見る(ROICの高さだけでなく、WACCを上回るかが本質)
  • 1つの指標で決めない(収益性・安全性・成長性とあわせて)

ROICと決算書(簿記の知識が効く)

ROICの材料は、すべて決算書から来ます。営業利益は損益計算書、有利子負債・自己資本は貸借対照表に載っています。

だから決算書を読める人ほど、ROICの“中身”を正しく理解できます。株主視点のROEと、会社全体の資本効率を見るROICを使い分けられると、企業を見る目が深くなります。企業価値の見方(EV/EBITDA)ともつながる話です。

よくある質問(FAQ)

ROICとROEの違いは何ですか?

ROEは株主のお金(自己資本)だけで利益を割るため、借金を増やすと数字が上がります。ROICは借金も含めた投下資本で割るので、借金の影響を除いた本業の資本効率を表します。

ROICは何%が目安ですか?

一般に8%程度が一つの目安とされますが、いちばん重要なのはWACC(資本コスト)を上回っているかどうかです。業種によって水準は大きく変わります。

NOPATとは何ですか?

税引後営業利益のことで、「営業利益×(1−実効税率)」で計算します。借金の利息を引く前の、純粋な本業のもうけを税引き後にした金額です。

ROICとWACCの関係は?

ROICが本業で稼ぐ利回り、WACCがお金を集めるコストです。ROICがWACCを上回っていれば、会社は調達コスト以上に稼げており、価値を生んでいると判断できます。

ROICの理解に簿記は必要ですか?

必須ではありませんが、材料の営業利益・有利子負債・自己資本は決算書から来ます。簿記が分かると、指標の意味を深く理解できます。

まとめ:ROICは「本業の資本効率」を素直に映す

最後に、この記事のポイントをまとめます。

  • ROIC=NOPAT ÷ 投下資本。借金も含めた元手で本業の効率を測る
  • NOPAT=営業利益×(1−税率)、投下資本=有利子負債+自己資本
  • ROEと違い、借金で水増しできない(本業の実力が出る)
  • ROIC > WACC なら、会社は価値を生んでいる
  • 材料は決算書から。簿記の知識が理解を深める

ROICは、借金のレバレッジに惑わされず「本業そのものの稼ぐ力」を映すものさしです。ROEと使い分けられると、企業の実力がよりクリアに見えてきます。

※この記事は特定の銘柄や投資をすすめるものではありません。投資の判断はご自身の責任で行ってください。指標は、あくまで「自分で会社を数字で見る」ための道具です。

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この記事を書いた人

偏差値40の高卒。社会に出てから発達障害と診断され、人生を変えようと簿記に挑戦するも、3級で4回不合格と挫折続き。それでも諦めずコツコツ続けた結果、簿記の最高峰・日商簿記1級(4回目で合格)と全経簿記上級に合格。2026年6月には証券アナリスト(CMA)第1次試験にも一発合格しました。

「低偏差値でも、コツコツ続ければ受かる」を信条に、簿記1級・証券アナリスト・財務分析の勉強法と合格体験を、このブログとKindle書籍で発信しています。

資格:日商簿記1級/全経簿記上級/証券アナリスト(CMA)第1次レベル試験 合格(2026年6月)

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