EV/EBITDAとは?企業価値の見方と使い方を簿記1級保有者が解説

「EV/EBITDA(イーブイ・イービットディーエー)って何?」「PERとは何が違うの?」——そんな方へ。

簿記1級と証券アナリスト(1次)で財務分析を学んだ私が、企業価値の代表的なものさし EV/EBITDA を、できるだけやさしく解説します。EV/EBITDAは、借金も含めた会社まるごとの値段が、本業の稼ぐ現金の何年分か を表す指標で、M&Aや割安・割高の判断でよく使われます。

この記事の結論
  • EV=会社まるごとの値段(株式時価総額+有利子負債−現金)
  • EBITDA=本業が生む現金の概算(営業利益+減価償却費)
  • EV/EBITDA=EV÷EBITDA。低いほど割安の目安(一般に8〜10倍が基準)
EV/EBITDAの組み立て方の図。企業価値EVは株式時価総額800+有利子負債300−現金100で1,000、EBITDAは営業利益100+減価償却費50で150、EV/EBITDAは1,000÷150で約6.7倍(目安の8〜10倍より低くやや割安の目安)
目次

EV/EBITDAとは?(会社の値段を“本業の現金”で測る)

EV/EBITDAは、企業価値(EV)を、本業が生む現金(EBITDA)で割った倍率です。ざっくり言うと「この会社をまるごと買ったら、本業の年間キャッシュで何年で元が取れるか」を表します。

数字が小さいほど、稼ぐ力のわりに会社の値段が安い=割安の目安です。PERと似ていますが、PERが「株主の取り分」だけを見るのに対し、EV/EBITDAは借金も含めた“会社まるごと”で見るのが大きな違いです。まずはEVとEBITDAを分けて見ていきましょう。

ぶんぶん

EV/EBITDAは、PERの『借金も込みで考える版』みたいなもの。借金が多い会社どうしを比べるとき、PERより公平に見られるんだ。

EV(企業価値)とは — 会社まるごとの値段

EV(Enterprise Value=企業価値)は、その会社を丸ごと買うときに実質いくらかかるかを表します。計算式はこうです。

EV = 株式時価総額 + 有利子負債 − 現金及び現金同等物

なぜ借金を足して、現金を引くのか。会社を買えば借金も引き継ぐので、その分コストが増えます(+有利子負債)。一方、買った会社が持っている現金はそのまま使えるので、実質の負担は減ります(−現金)。だからEVは「株の時価総額」だけより、買収の実態に近い金額になります。

株式時価総額は「株価 × 発行済み株式数」。つまりEVは、株主が見ている価値(時価総額)に、お金の貸し手の取り分(借金)も足した“全体の値段”です。

EBITDAとは — 本業が生む現金の概算

EBITDAは、利息・税金・減価償却を引く前の利益のこと。名前は「Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization」の頭文字です。難しく見えますが、ざっくりこう計算できます。

EBITDA = 営業利益 + 減価償却費

ポイントは減価償却費を足し戻すこと。減価償却は、過去に買った設備の費用を分けて計上する“お金が出ていかない費用”です。これを足し戻すと、本業が実際に生み出した現金に近い金額になります。

受験生

なんで減価償却を足すんですか?

ぶんぶん

減価償却は『今年お金が出ていく費用』じゃないからだよ。だから足し戻すと、本業が稼いだ現金の実感に近づくんだ。

EV/EBITDA倍率の意味と目安

EVとEBITDAが分かれば、あとは割るだけです。

EV/EBITDA(倍)= EV ÷ EBITDA

これは「会社をまるごと買った値段(EV)を、本業の年間キャッシュ(EBITDA)で何年分で回収できるか」という意味になります。たとえば10倍なら、ざっくり10年分です。

一般に8〜10倍前後が一つの目安と言われ、これより低いと割安、高いと割高の傾向とされます。ただし業種や成長性で大きく変わるので、同業他社や過去と比べるのが基本です。

なぜPERでなくEV/EBITDAを使うのか

PERでも割安・割高は見られます。それでもEV/EBITDAが使われるのは、PERの弱点を補えるからです。

観点PEREV/EBITDA
見る立場株主(株式だけ)会社全体(株主+お金の貸し手)
借金の扱い考慮しないEVに含める(借金込みで評価)
減価償却の影響受けるEBITDAで足し戻すので影響を除ける
得意な場面手軽な割安判断M&A・設備産業・国際比較
PER と EV/EBITDA の違い(角度が違うので、両方見ると立体的)

いちばんの強みは 借金の影響を除いて比べられること。借金が多い会社と少ない会社を、同じ土俵で比較できます。また、減価償却を足し戻すので、設備投資の重い業界(製造業・通信・インフラなど)や、会計ルールの違う海外企業との比較にも向いています。だからM&Aの現場で重宝されます。

【具体例】数字でEV/EBITDAを計算してみる

簡単な数字で、計算の流れを追ってみましょう。

項目金額計算
株式時価総額800
有利子負債300
現金及び現金同等物100
EV(企業価値)1,000800 + 300 − 100
営業利益100
減価償却費50
EBITDA150100 + 50
EV/EBITDA約6.7倍1,000 ÷ 150
EV/EBITDAの計算例(数字は説明用・単位は省略)

まずEVを出します。株式時価総額800に、引き継ぐ借金300を足し、使える現金100を引いて EV=1,000。次にEBITDAは、営業利益100に減価償却費50を足して EBITDA=150。最後に 1,000 ÷ 150 = 約6.7倍 です。

目安の8〜10倍より低いので、この会社は「本業の稼ぐ力のわりに、まるごとの値段は控えめ」=やや割安の目安と読めます。もちろん、これだけで「買い」と判断するものではありません。

EV/EBITDAを使うときの注意点

便利な指標ですが、万能ではありません。次の点に注意しましょう。

  • 業種で平均が大きく違う(成長業種は高め・成熟業種は低めになりやすい)
  • EBITDAは設備投資(将来の出費)を無視している点に注意
  • 低い倍率には「安いだけの理由」があることも(割安の罠)
  • 1つの指標で決めない(PER・PBRや収益性・安全性とあわせて)

EV/EBITDAと決算書(簿記の知識が効く)

EV/EBITDAの材料は、すべて決算書から来ます。営業利益・減価償却費は損益計算書やキャッシュフロー計算書、有利子負債・現金は貸借対照表に載っています。

だから決算書を読める人ほど、EV/EBITDAの“中身”を正しく理解できます。株主の取り分を見るPER・PBRと、会社全体を見るEV/EBITDAを使い分けられると、企業を見る目が一段深くなります。

よくある質問(FAQ)

EV/EBITDAは何倍が目安ですか?

一般に8〜10倍前後が一つの基準と言われます。これより低いと割安、高いと割高の傾向とされますが、業種や成長性で大きく変わるため、同業他社や過去と比べるのが基本です。

EVとは何ですか?簡単に言うと?

会社をまるごと買うときに実質いくらかかるかを表す金額です。株式時価総額に有利子負債を足し、現金を引いて計算します。借金も引き継ぐ前提で考えるのがポイントです。

EBITDAはどうやって計算しますか?

簡単には「営業利益+減価償却費」で求められます。お金が出ていかない費用である減価償却を足し戻すことで、本業が生み出した現金に近い金額になります。

PERとEV/EBITDAはどう違いますか?

PERは株主の取り分(株式だけ)を見る指標で借金を考慮しません。EV/EBITDAは借金も含めた会社全体を見るため、借金の多い会社どうしや設備産業・国際比較に向いています。

EV/EBITDAの理解に簿記は必要ですか?

必須ではありませんが、材料となる営業利益・減価償却費・有利子負債は決算書から来ます。簿記が分かると、指標の意味を深く理解できます。

まとめ:EV/EBITDAは「会社まるごと」を現金で測る

最後に、この記事のポイントをまとめます。

  • EV=株式時価総額+有利子負債−現金(会社まるごとの値段)
  • EBITDA=営業利益+減価償却費(本業が生む現金の概算)
  • EV/EBITDA=EV÷EBITDA。低いほど割安の目安(一般に8〜10倍)
  • PERと違い借金込みで見られる。M&A・設備産業・国際比較に強い
  • 材料は決算書から。簿記の知識が理解を深める

EV/EBITDAは、株主だけでなく「会社まるごと」を、本業の稼ぐ現金で測るものさしです。PER・PBRと使い分けられると、企業価値の見方がぐっと立体的になります。

※この記事は特定の銘柄や投資をすすめるものではありません。投資の判断はご自身の責任で行ってください。指標は、あくまで「自分で会社を数字で見る」ための道具です。

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この記事を書いた人

偏差値40の高卒。社会に出てから発達障害と診断され、人生を変えようと簿記に挑戦するも、3級で4回不合格と挫折続き。それでも諦めずコツコツ続けた結果、簿記の最高峰・日商簿記1級(4回目で合格)と全経簿記上級に合格。2026年6月には証券アナリスト(CMA)第1次試験にも一発合格しました。

「低偏差値でも、コツコツ続ければ受かる」を信条に、簿記1級・証券アナリスト・財務分析の勉強法と合格体験を、このブログとKindle書籍で発信しています。

資格:日商簿記1級/全経簿記上級/証券アナリスト(CMA)第1次レベル試験 合格(2026年6月)

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