WACC(加重平均資本コスト)とは?計算式と使い方を簿記1級保有者が解説

「WACC(ワック)って何?」「資本コストって、なんのコスト?」——そんな方へ。

簿記1級と証券アナリスト(1次)で財務分析を学んだ私が、WACC(加重平均資本コスト)を、できるだけやさしく解説します。WACCは、会社がお金を集めるのにかかるコストの平均 のこと。投資判断や企業価値の計算で使う、とても大事な数字です。

この記事の結論
  • WACC=会社がお金を集めるコストの平均(借金のコスト+株主が期待するリターン)
  • 借金のコストと株主のコストを、調達した割合で加重平均する
  • ROIC > WACC なら、コスト以上に稼げている=価値を生んでいる
WACC(加重平均資本コスト)の組み立て方の図。自己資本割合60%×株主資本コスト8%で4.8%、負債割合40%×税引後負債コスト2.1%で0.84%、合計してWACCは約5.6%
目次

WACC(加重平均資本コスト)とは?

WACC(Weighted Average Cost of Capital)は、会社がお金を集めるのにかかるコストを、平均した数字です。「加重平均資本コスト」と訳します。

会社はお金を、大きく2つのルートで集めます。借金(銀行や社債)と、株主からの出資 です。どちらもタダではありません。借金には利息、株主には「これくらいは儲けさせてほしい」という期待リターンがあります。この2つのコストを、集めた金額の割合で平均したものがWACCです。

ぶんぶん

WACCは会社の『お金の仕入れ値』みたいなもの。これより高い利回りで運用できないと、集めたお金で損していることになるんだ。

なぜ資本コスト(WACC)が大事なのか

WACCは「会社が最低限こえるべきハードル」を表します。

たとえばWACCが5%なら、事業は最低でも5%以上で回さないと、お金の出し手(銀行・株主)の期待に応えられません。だから新しい投資をするかどうかも、「その投資がWACCを上回るリターンを生むか」で判断します。WACCは、投資判断や企業価値の計算(割引率)に使われる、土台の数字なのです。

2つの資本コスト(負債コストと株主資本コスト)

WACCを作る材料は、2種類のコストです。

資金の出し手コスト(会社にとって)ポイント
お金の貸し手(銀行・社債)負債コスト=借入金利利息は税金が減る効果があり、税引後で考える
株主株主資本コスト=株主が期待するリターン配当+値上がり期待。借金より高くなりやすい
会社がお金を集める2つのルートと、それぞれのコスト

負債コスト は、借金にかかる利息です。ここで大事なのは、利息は税金を減らす効果がある こと。利息は費用なので、そのぶん利益が減り、払う税金も減ります。だから実質の負担は「利息 ×(1 − 税率)」になります。これを税引後の負債コストと呼びます。

株主資本コスト は、株主が「これくらいのリターンを期待している」という水準です。配当や値上がり益への期待で、ふつう借金の利息より高くなります。

受験生

株主のコストって、目に見えないのにどう決めるんですか?

ぶんぶん

ざっくり『安全な金利(国債など)+そのリスク分の上乗せ』で考えるんだ。値動きが大きい会社ほど、上乗せも大きくなるよ。

WACCの計算式

2つのコストを、調達した金額の割合で加重平均します。式はこうです。

WACC = 自己資本の割合 × 株主資本コスト + 負債の割合 × 負債コスト ×(1 − 税率)

「割合で平均する」だけなので、考え方はシンプルです。借金が多い会社は負債コストの影響が大きく、株主資本が厚い会社は株主資本コストの影響が大きくなります。

【具体例】数字でWACCを計算してみる

簡単な数字で、計算の流れを追ってみましょう。

項目数値計算
有利子負債(D)400
自己資本(E)600
負債コスト3%
税引後 負債コスト2.1%3% × (1 − 0.3)
株主資本コスト8%
WACC約5.6%0.6×8% + 0.4×2.1%
WACCの計算例(税率30%・数字は説明用)

まず割合を出します。負債400・自己資本600なので、合計1,000のうち自己資本60%・負債40%。次に税引後の負債コストは 3% ×(1 − 0.3)= 2.1%。あとは加重平均で、0.6 × 8% + 0.4 × 2.1% = 4.8% + 0.84% = 約5.6% です。

この会社のROIC(本業の利回り)が8.4%だったとすると、ROIC 8.4% > WACC 5.6% なので、調達コスト以上に稼げている=価値を生んでいる、と読めます。ROICとWACCはセットで見ると効果的です。

WACCを使うときの注意点

WACCは強力な数字ですが、いくつか注意点があります。

  • 株主資本コストは“見えない”ため、前提しだいで数字が変わる
  • 借金を増やすとWACCは下がるが、増やしすぎは倒産リスクを高める
  • 業種・金利環境で水準が変わる(同業や時期をそろえて比べる)
  • WACC単体でなく、ROICなど“稼ぐ力”とセットで判断する

とくに「借金を増やすとWACCが下がる」点は、財務レバレッジの話とつながっています。あわせて読むと理解が深まります。

WACCと決算書(簿記の知識が効く)

WACCの材料も、決算書とつながっています。有利子負債や自己資本は貸借対照表から、税率は損益計算書の感覚から読み取れます。

資本コスト(WACC)と、本業の稼ぐ力(ROIC)、そして企業価値(EV/EBITDA)は、すべて地続きの話です。決算書を読める人ほど、これらを立体的に理解できます。

よくある質問(FAQ)

WACCとは何ですか?簡単に言うと?

会社がお金を集めるのにかかるコストの平均です。借金のコスト(利息)と株主のコスト(期待リターン)を、調達した金額の割合で加重平均して求めます。

WACCは何%くらいが普通ですか?

会社や金利環境によりますが、一般に数%〜10%程度のことが多いです。借金が多いほど下がり、株主資本が厚いほど上がる傾向があります。

なぜ負債コストは税引後で考えるのですか?

支払う利息は費用になり、そのぶん利益が減って税金も減るからです。この節税効果を反映するため、「利息×(1−税率)」で実質の負担を計算します。

WACCとROICの関係は?

WACCがお金を集めるコスト、ROICが本業で稼ぐ利回りです。ROICがWACCを上回っていれば、会社はコスト以上に稼げており、価値を生んでいると判断できます。

WACCの理解に簿記は必要ですか?

必須ではありませんが、有利子負債・自己資本・税金は決算書から来ます。簿記が分かると、資本コストの意味を具体的に理解できます。

まとめ:WACCは会社の「お金の仕入れ値」

最後に、この記事のポイントをまとめます。

  • WACC=会社がお金を集めるコストの平均(借金+株主)
  • 負債コストは税引後(利息×(1−税率))で考える
  • 株主資本コストは“安全な金利+リスク分の上乗せ”でとらえる
  • ROIC > WACC なら、会社は価値を生んでいる
  • 投資判断や企業価値の割引率に使う土台の数字

WACCは、会社が「最低限こえるべきハードル」を示す数字です。ROICやEV/EBITDAとあわせて使えると、企業価値の見方がぐっと立体的になります。

※この記事は特定の銘柄や投資をすすめるものではありません。投資の判断はご自身の責任で行ってください。指標は、あくまで「自分で会社を数字で見る」ための道具です。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

偏差値40の高卒。社会に出てから発達障害と診断され、人生を変えようと簿記に挑戦するも、3級で4回不合格と挫折続き。それでも諦めずコツコツ続けた結果、簿記の最高峰・日商簿記1級(4回目で合格)と全経簿記上級に合格。2026年6月には証券アナリスト(CMA)第1次試験にも一発合格しました。

「低偏差値でも、コツコツ続ければ受かる」を信条に、簿記1級・証券アナリスト・財務分析の勉強法と合格体験を、このブログとKindle書籍で発信しています。

資格:日商簿記1級/全経簿記上級/証券アナリスト(CMA)第1次レベル試験 合格(2026年6月)

【簿記学習に困ったら個別相談もOK】

簿記1級・2級・3級の質問・学習相談を、ココナラで受付中です。
★5.0/5件の評価で、初回返答1時間以内。
「テキストのこの部分が分からない」「自分の勉強計画は合ってる?」など、お気軽にご相談ください。

▶ ココナラで相談する

【ブログでは書ききれない実体験はKindle本にまとめました】

『日商簿記1級合格体験記』(Kindle)
3回不合格の心境、4回目で合格するまでのリアルな葛藤まで、ブログでは書ききれなかった内容を1冊にしています。

▶ Amazonで読む

【他のSNS・発信はこちら】

X(旧Twitter)、ブログ、他のKindle本、ココナラ全サービスを
lit.linkにまとめてあります。

▶ ぶんぶんの全リンクを見る

目次